(公財)日本ラグビーフットボール協会 公認指導者各位
「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」補足説明
(公財)日本ラグビーフットボール協会普及育成委員会
平素はラグビー普及発展に多大なるご尽力を賜り厚く御礼申し上げます。
6月19日付で日本ラグビー協会より「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]が発行されました。
既に練習を再開されているチーム、これから再開を予定されているチームがあることでしょう。皆様におかれましてはガイドラインを熟読され遵守いただき安全面を十分に考慮しながら活動を進められていることと思います。
本資料は、「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]についての補足説明資料となります。
皆様は、これまで、重傷事故、熱中症対策には充分に対処されてこられたことと存じますが、加えて感染症対策という新たなリスクが加わっております。ラグビーというスポーツに関わる団体であることの社会的責務、及び、ラグビー競技そのものが持つ社会的価値について強く意識を持っていただき、慎重な活動と安全なプレー復帰への準備をお願いいたします。
なお「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]は、新型コロナウイルスが終息に向かうことを大前提とした資料となります。現在、感染者数が増加傾向にあります。今後の感染状況によってはレベル別活動指針のレベルの後退や延長など、状況に合わせた感染症対策をお願い致します。
1.コロナ禍での活動へのヒント
1)貴チーム独自のガイドラインの作成
日本ラグビー協会より出した「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]やワールドラグビーの資料[資料7・8]、またスポーツ関連団体の資料を参考に、まずは貴チーム独自の感染予防のガイドラインを作成し、事前にチーム関係者(プレーヤー、保護者、施設側)に方針を伝え、協力体制を構築してください。
2)練習参加の意思確認
感染防止策を行っても感染リスクはゼロにはなりません。プレーヤーによっては、高齢者や重症化が懸念される疾患を抱えている身内と同居している、感染リスクのある活動への参加に対して精神的に不安があるなど様々な状況が想定されます。よって練習参加については強制とせず、必ず個人に意思(未成年は保護者の同意)を確認し、その決断を尊重してください。
3)大きな3つ枠の対応策のポイント
大きく3つ枠組みに分けて意識するべきことをまとめました。既に独自のガイドラインを作成しているチームについては、ガイドラインのチェックリストとしてご活用ください。
【感染者が練習に参加しないための対応】
□練習参加のルールを決めましょう。
□練習当日は受付(入口)を作り、体調確認(検温など)、アルコール消毒、感染対策の確認などを行いましょう。
□所属の学校現場、居住地域で陽性者が出た場合などの対応などを事前に決めておきましょう。
【練習中の対応】
□練習前、練習中、練習後ともにソーシャルディスタンスを確保する仕組み作りをしましょう。
□可能な限り屋外でトレーニングを行いましょう。
□ミーティングはオンライン[資料6]を基本として、集合して実施する場合は、できれば屋外、ソーシャルディスタンスの確保、マスク着用で実施しましょう。
□グランドの出入口付近が密にならないための導線を作りましょう。
□感染状況に応じて時短練習やグループ練習を取り入れましょう。
□見学者(保護者・ファン)のルールを決めましょう。
□幼児、小学生、中学生などはソーシャルディスタンスを自分たちで守ることが困難な場合があります。可能な限りマーカー等で立ち位置等を明確にしましょう。
□プレーヤー同士が真正面で向き合う時間を少なくしましょう。
□咳エチケットを徹底しましょう。
□指導者は原則、マスクを着用して練習しましょう。(ただ指導者も熱中症のケアが必要ですので、プレーヤーと離れた場所ではマスクを外すなどの対応をしましょう。)
□マスクを着用して練習するプレーヤーについては、熱中症のケアが必要ですので、小まめな水分補給、体調確認、仲間と離れた場所ではマスクを外す指示を出すなど、常に気にかけましょう。
□指導者が大きな声を出すことを控えましょう。(飛沫感染防止)
□プレーヤー同士もマスクをしない状況での無駄なおしゃべりは控えるように指導しましょう。(飛沫感染防止)
□指導者は電子ホイッスルを活用しましょう。
□練習中や練習後の手洗いや消毒を徹底しましょう。
□小まめに道具の消毒をしましょう。
□衣服などにもウイルスなどが付着する可能性がありますので練習後に着替えをさせましょう。
□集合写真等は控えましょう。
【練習後の対応】
□練習後の手洗いと消毒を徹底しましょう。
□練習後は着替えをしましょう。(感染拡大の防止)
□グランドの出入口付近が密にならないための導線を作りましょう。
□練習後は直ぐに帰宅させましょう。
□車での相乗りを避けるようにしましょう。(感染拡大の防止)
□公共交通機関の利用は必要最低限にしましょう。(感染拡大の防止)
□感染者が出た場合の連絡方法や対応について決めましょう。
(貴チームのガイドラインに記載し、事前に参加者に伝えましょう。)
【熱中症対策を忘れない!】
熱中症へのケアを忘れないようにしましょう。特にマスクをして練習するプレーヤーやコーチついては注意が必要です。参考資料「 日本ラグビー協会「2020夏季の練習についての注意」
2.レベル別活動指針の理解について
下記の表は、日本ラグビー協会の新型コロナ対策チームにおいて作成された「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]のレベル別活動指針となります。本項目では、特にレベル別活動指針について補足説明をさせていただきます。
1)レベルアップの期間と活動方法の大枠
レベル5の活動を行う前には、レベル2(1週間)・レベル3(1週間)・レベル4(2週間)を経たうえでお進みください。つまり活動を再開してから、レベル5まで進むには原則4週間を要することになります。レベル5からはコンタクトが可能となりますが、プレーヤーのリコンディショ二ングの観点から公式戦を行うまでに8週間の準備期間を設けることを推奨しています。レベル毎の練習内容についてはチームによって練習頻度、練習強度等に差異がありますので、指導者がプレーヤーのリコンディショ二ングの状態を適切に見極めた上で、各チームで再開計画を作成してください。なお他チームとの交流については都道府県及び教育委員会・学校のガイドラインに従ってください。繰り返しになりますが、3月からの自粛による不活動の影響は想像以上に体力やスキルを低下させています。また能力の低下については個人差も大きくあります。重症事故が起こらないように、安全にプレーすることを第一優先にした無理のない再開計画の作成をお願い致します。なお「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]は、新型コロナウイルスが終息に向かうことを大前提とした資料となります。現在(7/21)、感染者数が増加傾向にありますので、今後の感染状況によっては、レベルの後退や延長などの対応をお願い致します。
2)タグラグビーとタッチラグビーはどのレベルから可能なのか?
レベル4の内容において、「相手をつけたチーム単位でのランニングが可能」という表現があります。その表現により、タッチラグビーやタグラグビーは可能なのかという多くのお問い合わせをいただきました。タグラグビー、タッチラグビーは身体接触を伴うことからコンタクトプレーという位置付けとなりますのでレベル5からとなります。
3)レベル1から4の留意点
①段階的な活動強度の重要性
レベル4まではボールゲーム的側面(相手をつけたような練習)の活動について制限があります。それによりフィジカルトレーニングの時間が増えることと思います。忘れてはならないことは、プレーヤーは、これまでに経験のない不活動の時間を過ごしていたということです。体力は想像以上に衰えていると考えてください。この状況下で、いきなり激しいフィジカルトレーニグを行うことは、当日の体調不良、怪我の誘発、さらに気持ちの部分での意欲の低下等を引き起こします。それらのリスクを軽減するには、必ず強度の低いメニューから強度の高いメニューへと段階的に移行することを決して忘れないことです。また活動時間についても、感染予防や段階的な復帰という側面を踏まえて時短練習やグループ練習等を導入することを検討してください。
②レベル2での小規模人数(グループ)の練習時の注意点
レベル2は10名以下のグループの規模での活動となります。グループ別とする際は、グランドの中の離れた場所で活動することは問題ありません。ただ、それぞれのグループが交わる機会があると感染予防になりませんので、グループが交わらないための導線やルールを決めてください。
③レベル4の練習内容について
レベル4から「相手をつけたチーム単位でのランニングが可能」という表現の記載があります。これは、指導者だけでなく、プレーヤー同士でも相手をつけた練習をすることができることも意味します。ただ、もう一方では「ソーシャルディスタンスの確保」との記載もあります。「相手をつけたチーム単位でのランニングは可能だがソーシャルディスタンスは確保しなければならない」という一見矛盾する表現により、悩まれている方もいることと思います。この表記は、「防御をつけることは問題ないが、攻撃と防御は2mの距離を確保した中での攻防の範囲では可能」ということになります。ただ現実的にプレーヤー同士のゲーム形式の練習において2mの距離を常に確保し続けることは非常に困難なことです。よってレベル4での「相手をつける」とは、防御側が攻撃側のパスなどのタイミングの目安となるよう役割の範囲と考えてください。ラグビースクールなどは、指導者がマスクやフェイスシールドを着け、ディフェンス役を行うことが良いでしょう。※指導者のディフェンスはあくまでも攻撃の目安となる範囲ですので、無駄なコンタクトが起きないようにすることは忘れないでください。
④レベル2から4の練習内容のヒント
下記のような練習の構成を参考にしてください。
◆身体的な機能を回復させるためのプログラム
・ワールドラグビー傷害運動予防プログラムなど[資料4][資料5]
◆ハンドリング&キッキング&ランニングパス
・1人ボール1個でのハンドリング
・1人ボール1個でのターゲットへのキックやパスなどでの的当て
・2人ボール1個でパスやキックなどでのキャッチボール
・3人一組や4人一組などでのハンドリングやランニングパス等
◆レベル4からのゲーム形式を行う場合(1対1、2対1、3対2)
・指導者がマスクとフェイスシールドをつけてディフェンス役となる。
4)レベル5の留意点について
①レベル5−1の小規模(人数制限)の意図
レベル5からはタグラグビーやタッチラグビーなどが可能となります。レベル4で規模(人数)の制限が無くなりますが、レベル5−1で、改めて10名以下のグループの規模での活動をお願いしています。その意図は、コンタクト練習がはじまり、感染リスクが増すことに対しての軽減策となります。レベル2と同様にグループ別とは、グランドの中の離れた場所で活動することは問題ありません。ただ、それぞれのグループが交わる機会があると感染予防になりませんので、グループが交わらないための導線やルールを決めてください。
②着替えの準備の意図
レベル5からは接触プレーが増えることで、衣服などにもウイルスが付着する可能性があります。可能な限り練習後に着替えをさせて帰宅させるように心がけましょう。
③コンタクト練習の時間について
国立感染症研究所感染症疫学センターの濃厚接触の定義は、「マスクをせず、1m程度の距離で15分以上の接触」とされています。コンタクト練習を計画する際は、この基準を考慮に加えて検討してください。また練習を組み立てる際はコンタクト練習の順番を最後にすることも感染リスクの軽減につながります。なぜなら、万が一、無症状の感染者がいた場合、コンタクト練習が最後であれば、衣服等にウイルスが付着する時間を短くすることができるので感染リスクの軽減に繋がります。
④レベル5の練習内容のヒント
レベル5の活動にあたっては、身体的なコンディションの回復を意識し、必ず強度の低いフィジカルコンタクトから強度の高いフィジカルコンタクトへと段階的に移行するようにしてください。特にコンタクト練習については紹介するステップ[資料4]を参考としてください。
最後に
冒頭でお伝えした通り、「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」[資料1]は、新型コロナウイルスが終息に向かうことを大前提とした資料となります。現在、感染者数が増加傾向にあります。今後の感染状況によってはレベル別活動指針のレベルの後退や延長など、状況に合わせた感染症対策をお願い致します。
日本ラグビー協会では、ガイドラインへの質問[資料2]を受け付け、Q&A[資料3]を日本ラグビー協会HPに掲載しており、今後も更新してまいります。指導者の皆様におかれましては、引き続き、感染拡大予防に留意しながら、正しい知識をもって、安全第一での活動をお願い致します。
各種資料
[資料1]「ラグビートレーニング再開のガイドライン(第2版)」
[資料3]「ラグビートレーニング再開のガイドラインについてのQ&A」
[資料4]COVID-19に伴うトレーニング活動自粛からトレーニング再開に向けたリコンディショニングに関するガイドライン
[資料7]ワールドラグビー COVID-19 関連資料
[資料8]ワールドラグビー COVID-19 関連資料
以上